泡沫眼角-ウタカタメカド-
外れた口を慌てて閉めると、みるみる顔が赤くなって。

「おま、所轄のクセに生意気な!!」

「黙っとけ、川井」

「…はい、すんません」

警部は強し。
川井と呼ばれた刑事はすごすごと引き下がる。
警部は朋恵にも目を向けた。

「お前もすぐ突っかかるなよ」

「ハッ、狸に言われたくないわよ。狸ジジイなんかに」


高橋があちゃ、と顔を覆うのと川井が声を上げるのは同時だった。

「てめコラァ!! 警部だぞ、相手は警部だぞ、格上に何言ってんだてめえ!!」

「うるっさいわね。全部承知の上で言ってんのよ」

さらりと返す朋恵。
川井はさらに真っ赤になって叫ぶ。

「なおさら悪いわコラ!!」

「コラだてめえだレパートリーが少ないわね。文句言う前に頭を鍛えなさいよ!!」

「あんだと!?」

「いい加減にして下さい!!」

ピタリと止む怒号。
奥にいた管理官や署長たちは安堵のため息をついた。

対して間に入った高橋は肩で大きく息をした。

「話が進みません」

「だとして、見過ごせる態度じゃないだろう!」

「いいんだよ川井。朋恵に限ってはな」

「と、ともえぇ?」


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