泡沫眼角-ウタカタメカド-
「話……続けていいですか?」
高橋が気のない声を出すと、ようやく彼らは顔をこちらに向けた。
「その人によりますと、怪しい人物は見えないようにシートに隠されながら運び出された被害者の遺体を金子であるとピタリと言い当てた。
さらに、金子はヤクザだから便利だったのにという言葉を残したそうです」
「つまりは、ヤクザもんじゃねぇってことか」
狸翠は手を組んで考えこむ。
高橋はさらに、言乃から聞いた怪しい人物の身体的特徴を伝えた。
「…臭うと思いませんか?」
「今の話で俺の頭に1人、浮かんだ人物がいる」
当たった!
ベテランの情報量はやはり並みではない。
高橋は内心で喜び、狸翠の意味深な言葉に身を乗り出す。
「極秘事項で、あんまり周りには知らせてないんだが…俺が6年程前から追っている件でもある」
「もったいぶってないで早く言いなさいよ」
心ない一言だが、もっともだ。
狸翠は悲しいため息をついて続けた。
「黒蜜会って名前くらいは、聞いたことあんだろ」
「!!」