泡沫眼角-ウタカタメカド-
三人の表情が強張った。
いい名前ではない。
黒蜜会――甘い見た目に惑わされてはいけない。
それは窃盗、誘拐、殺人、密売と何でもありの犯罪集団の名称。
多くが謎に包まれており、しばらく前に起きた占いの館事件にて、一味の一人を逮捕。
さらにボスが若い男であるという情報が寄せられた程度。
その犯罪集団が、関係してるというのか――?
狸翠は手を組み、顎を預ける。
「その黒蜜会の中でも大物中の大物……ボスの秋元冬也(アキモト トウヤ)だ」
「なぜ…」
「秋元の目撃証言と特徴が一致する」
「なんでそんな人間の情報を極秘にしておくのよ?」
朋恵の言葉に、狸翠はチッチッと指を振る。
「甘い。奴の肩書きはこうだ。“顔を見た者は仲間になるかその場で死ぬしかない”とかだったな」
「だから何よ?」
「情報公開してみろ。奴を捕まえようとした人間、片っ端から殺られるぞ」
これには朋恵も黙るしかなかった。
狸翠はカタン、とパイプ椅子から立ち上がった。
「まあ、黒蜜会についてはこっちで当たってみる。川井、いくぞ」
「はっ!」
「お互い、早期解決に向けて頑張ろうぜ〜」
手をひらひらさせながら、狸翠と川井は会議室から出ていってしまった。
「、あぁムカつく!! 行くわよ高橋!」
「ヒッ、ははい!」
今日も先輩の機嫌は悪そうだ。