泡沫眼角-ウタカタメカド-
「? この声…」
いや、まさかな。
懐かしい声を聞いた気がしたが、あり得ないと首を振る。
いくら会いたいからってそりゃもう俺末期だろ。
否定してリモコンを取り上げると、また聞こえた。
「!!」
これは……もう…
間っ違いなぁーい!!
炯斗から突如として眠気と二日酔いが消え去り――むしろ体調は絶好調にまで駆け上がり――炯斗は玄関に走った。
ガッと勢いよくドアを開け放ち、
「こっとのーーん!!」
「「うひゃあっ!」」
びっくりして飛び上がった女性とその声にびっくりしたと悲鳴が2つ。
片方は炯斗にしか聞こえていない。
その後ろ姿に炯斗の胸は躍った。
「やっぱりことのんだ! 恵も!」
「炯斗!?」
無論驚く言乃と恵。
わーいと二人の元へ駆け寄ろうとする炯斗の前に、太い影が立ちはだかった。
「ことのんには指一本触れさせないぞ日奈山炯斗」
セリフはどうあれ、格好がつかない。
トシオである。