泡沫眼角-ウタカタメカド-
* * *
路地裏で二人の男がまみえたのと同時刻
その路地の側に立つビルから、一人の男が通りに出た。
「うぷ……」
よろよろした千鳥足で道行く男は、恨めしげに上を見上げた。
頭上には、明るく光る居酒屋の窓が並ぶ。
店のロゴの合間から、はしゃいだ友人がニヤニヤとこちらを見下ろしていた。
――ちくしょう、笑い者にしやがって
文句を言おうと口を開きかけると、再び胃の中がひっくり返って、男はパチンと口元を押さえた。
なんとも情けない、とビルに凭れ掛かる。
飲み過ぎた胃は体の内側にさらに重く凭れる。
「あー…気持ち悪ぃ…」
やつれた顔で口を塞ぐ男の名前を日奈山炯斗(ヒナヤマ ケイト)と言った。
東京郊外でこの近くの星花大学に通う二年生。
金髪に染めた髪はワックスで上げられ、独特の形に跳ねている。
眼鏡はフレームは弦をちょっとおしゃれにし、長身に合う服装にも気を使うため、見た目はチャラチャラした大学生そのもの。
楽しい大学生活を謳歌し、今夜は飲み会を楽しんでいたのだが……