泡沫眼角-ウタカタメカド-

【とるって、トシオさんは何か盗みでも働こうとしたのでしょうか?】

本当にわかりません。
そう言った顔の言乃に携帯を向けられて、恵は明後日の方向を振り返った。

どうすればいいんだろう?

恵の首筋を嫌な汗が伝う。

炯斗とトシオくんの関係なんて初めての私でも火を見るより明らかなのに。
どう考えても二人はことのんを取り合ってて、隠すどころか完全にオープンなのに!
これがいわゆる鈍感ってやつのこと?

それより二人ともことのんにどうやって言えばいいんだろう!


途方に暮れた恵は助けを試みるが、トシオ討伐に集中である。

「どうしよう……」

【恵ちゃん?】


ストレートになんて言える訳がない。
言うべきか言わざるべきか――
よし、じゃあ言――

「な、なんだこれぇっ!!」


恵の決意は、トシオの騒ぎにもみ消された。


「なんだ?」

【何かありましたか?】

言乃が感心をそちらに向けられたと同時に、恵は胸を撫でおろした。


言わずにすんだっ!――


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