泡沫眼角-ウタカタメカド-
ファントム
* * *
オレが気づいたとき、オレを気にかける人間はどこにもいなかった。
ここがどこなのかわからない。
どうしてここにいるのかもわからない。
わからないことだらけで、呆然とその場に立っていることしか出来ない。
──そうだ、家へ帰ろう。
ぼんやりと思ったのは、ずいぶん経ってからだった。
時間の感覚もおかしくなっているらしい。
そして、どうやって家までたどり着いたのかわからない。
ふと気づけばもう家の前。
門前に立つ。
しかし、門は何のアクションも起こさない。
オレがこの場に立てば、すぐに開けてもらえたはずなのに。
──まさか、何かあったのか?
家の外見は何か変わったようには思えない。
それがさらにオレの不安を助長させ、オレは門の中へと走った。