泡沫眼角-ウタカタメカド-
オレの心配とは裏腹に、中はいたって平穏だった。
しかし、外と変わらずオレに見向きしない。
──どうしてだ? 皆、一言言ってくれてもいいのに。オレが帰ってきたんだぞ?
疑問は不安になり、不安は焦燥に変わっていく。
家の中を闊歩するオレの足取りは、速くなった。
──なんで、なんで?
焦る気持ちを抑えつけて、廊下を進む。
──そうだ。
気づいた。
足も同時に止まる。
まだオレは家族に会ってないじゃないか。
そうだよ、こいつら皆新入りかもしれないじゃないか。
家族に会えば、わかってくれる。オレをわかってくれる。
見てくれる。
無意識に、歯が震えて、手を握り締めていることも自覚せずに。
オレは、親父の部屋の扉が薄く開いてるのを見つけた。
そっと近づいて、扉に手をかける。