泡沫眼角-ウタカタメカド-
開いてみたが、親父はいなかった。
代わりに、こだわって買ったデスクの上には書類が数枚。
きちんと書類を整理する親父にしては、そのまま放置しているなんて珍しい。
──一体…何の…?
一枚目。
「!? ……そ、そんなっ…」
それは診断書。
親父の健康診断書。
そこには、ガンの宣告がなされていた。
末期ではないのが救いであろうが、これを見る限り、予断を許さない状況のようだ。
──何でだ? こないだまで、何の変化もなかったのに。こんなにいきなり発生するもんなのか?
おかしい。絶対におかしい。
オレは早鐘を打つ心臓を無視して、次の書類を見た。
「───!!」
視界が、突然真っ暗になったような気がした。
世界の重力が、すべてオレの肩にのしかかっているように、オレはひざをついた。
書かれていたのは親父の名前ではなく、オレの名前。
それは、捜索願。