泡沫眼角-ウタカタメカド-
炯斗は数週間前まで、とある島に出掛けており、そこで起きた事件の解決に大きく貢献したため、本土に戻ってくると警察の感謝状やら雑誌のインタビューやらで、ちょっとした有名人になっていた。
これはヤバイ、としばらく大人しくしていたのだが、表に戻ってきて見れば、早速ミーハーな悪友に捕まり、居酒屋に連れ込まれたというわけだ。
――この程度でこの様って、情けなぁ俺
事件の話を聞かせろと、飲めや歌え、口八丁手八丁。
見事に炯斗は潰れた。
吐きそうになってようやく友人から夜風に当たる許しをもらい、今に至る。
気分はもちろん、最悪だった。
――でも肝心なことは話してない、筈! 俺凄い。頑張った!
わけのわからないことをぶつぶつぶつぶつ。
ふと気付いて顔を上げると、辺りは暗かった。
「?」
――なんだよここ。つかどこ?
酔った足が進んだ道を頭が把握しきっていない。
「ま、いっか」
帰れないことはない。
そう腹をくくって、暗い道に足を踏み入れた。