泡沫眼角-ウタカタメカド-
──ガッシャン!!
「何やってんですか!?」
狸翠の突然の行動に、思わず川井は声を上げた。
二度の騒音に、皆さん作業を止めてこちらを見ている。
同じように冷たい視線を浴びているはずの狸翠は、足元の残骸を見て、ニヤリと笑った。
「これ、見てみろ」
狸翠に言われて、しゃがんでみる。
陶器の欠片の他に僅かな小銭。
そして、小銭に対して多すぎる、小さな紙の包みが。
拾い上げて見る川井の目が鋭くなった。
「これは……」
「十中八九、パケだろうな」
パケとは、麻薬の入った包みのこと。
紙でも袋でも、みなパケだ。
興味津々で見つめてくる作業員に、狸翠は大声で言った。
「誰か中身を詳しく調べてくれ! まだ他にも隠されている可能性がある。よく探せ!」
「「はい!!」」
思わぬ収穫に、自然と意欲が沸いてくる。
自分も探そうと近くの物に手を伸ばしかけて、止まる。
「警部、どうして薬があると思ったんです?」
「枕元にこれがあった」
ピラ、と見せられた小さなメモ。
『次の売り場について 冬也さんに連絡』