泡沫眼角-ウタカタメカド-
冬也さん? それってまさか――
「そう、黒蜜だよ。奴ら麻薬密売にも手出してる。売りさばくのに、暴力団のこいつが利用されたってことさ」
川井の脳裏に、高橋の報告が浮かび上がる。
『――ヤクザだから便利だったのにという発言――』
殺人、暴力団、麻薬、黒蜜会
これはいよいよ――
「厄介な事件になりそうですね」
「まあな」
言葉とは裏腹に、狸翠の表情はどこか熱気を感じさせた。
やはり、刑事としての血が騒ぐのか、それとも因縁の相手とあいまみえるのが楽しみなのか。
それは川井には分からない。
しばらくして、彼は立ち上がった。
「今はこんなもんだろうな。報告頼むぞ」
そう言って玄関に向かう。
「あ、今回のこと麻取にはまだ秘密な! わかったな!」
手柄とられたらたまらんからな、と。
ちゃっかりしてるよ、この上司。
川井はクスリと笑う。
やっぱり、この人と組めて良かったかもしれない。
「行くぞ川井」
「はい!!」