泡沫眼角-ウタカタメカド-
『朝の野次馬勢の中にいたらしいのよ。会ったのは高橋だけど。そこでまたちょっと、一言くれたのよ』
『ことのんが?』
炯斗はビックリした。
正義感はあるが、自分から関係のない事件に飛び込んでいくタイプではない。
それなのに――?
『まあ普通に考えて、雑談で事件の話なんかしないわね』
『うん。でも俺昨日そこらへんいたのにな』
『まぁ、とにかく。そこの事件がここの暴力団の大跳真組系比津次会(オオトマクミケイ ヒツジカイ)と関連しているのよ』
へぇ、と頷く炯斗の手を朋恵は素晴らしい笑顔でがしっと掴む。
『お隣なら色々と話は聞いてるわよね?』
『え。』
『おまけに昨日あの辺りにいたんでしょう? 何かみてるかもしれないし』
『え。え、』
固まる炯斗の前に、トシオを解放した高橋が戻ってきて、この状況に困惑しつつ朋恵を見た。
『高橋』
『は、はい?』
助けて! 高橋さん助けて!
という炯斗のテレパスは氷の女に阻まれ、
『連行』
この言葉に潰された。
――そして現在に至るというわけである。