泡沫眼角-ウタカタメカド-
炯斗はやや口を尖らせながら警察署を出た。
ちぇー、やっぱともちー怖えなぁ…
高橋さんもなんか似てきたよ。多分
久々に出会った二人に勝手な憶測を飛ばす炯斗の足は、しばらくしてゆっくりと止まる。
そして、再度警察署を振り返る。
――奏兄ちゃん……前みたいなことにならなきゃいいけどな
炯斗の家の隣に住む狭間家。
数年前に何か騒動があったらしいが、内々に済まされ、部外者の炯斗に知らされることはなかった。
しかし、その騒動の後の奏はまるで空っぽで当時炯斗は立ち直れるか本当に心配したものだ。
今は父も亡くなり、きっと大変なはずだ。
親しいかは知らないけど、また一人仲間がいなくなっちまったなんて…
また、沈んでしまうか。
「……まぁ、今俺が考えててもしょうがないか!」
――……でも
炯斗は頭を振ってその考えを追い払った。
「今日はことのんと恵にも会えたし、いい日なはずだ! よし帰ろう!」
その時――
グラリ、
「、!?」
ガツンと頭を殴られたかのように、視界が歪んだ。
足も覚束無く、近くの電信柱に手をつく。
「なんっ――」
『…代われ』
「!?」
謎の声に振り返る間もなく、突如炯斗の意識は闇に落ちていった。