泡沫眼角-ウタカタメカド-

* * *

炯斗を帰してすぐ、朋恵たちは捜査会議にと召集がかかった。
また狸と顔を会わせなきゃならないと思うととても気が重いが、行かないわけにはいかない。

そして隣では、また狸と顔を会わせて不機嫌になったらどうしようと高橋が頭を悩ませていることを朋恵は知らない。

たった一日の捜査でどこまで情報が集まったか、見物ね。
二人には、今仕入れたばかりの貴重な証言がある。
高橋も同じ考えにいったのか、小さく耳打ちしてきた。

「日奈山くんの話はどこで方向できますかね?」

「わからないわ。でも、使えることは確かよね。流れはくるから、まずは待ちましょう」


署長がマイクで始めます、と響かせ、捜査会議は始まった。

遠くに座る二人が立ち上がる。

「被害者の死因ですが、首の付け根、生え際の辺りを細く鋭利なもので刺されたことによる、窒息死と思われます」

は?
思ったのは朋恵だけではなく、どよめきが走る。
管理官がなだめさせてようやく静かになると、刑事は戸惑いつつまた喋りだした。

「検死によりますと、先が脊髄に届くと脳と体とをつなぐ神経系にダメージが入り、呼吸困難に陥るそうです」

「ふーん…」

「妙なやりかたですね」

朋恵がうなずくと、報告はまだ続く。


< 74 / 267 >

この作品をシェア

pagetop