泡沫眼角-ウタカタメカド-

「また、首はすぐに骨につながることから上から体重をかければ、力のない女性にも犯行は可能です」

「厄介ね、ターゲットが増えるじゃないの」

「暴力団襲う女性ってそうはいないと思いますけどね」

高橋が苦笑する横で次は狸翠が立ち上がり、朋恵のペンを持つ手に力が加わった。

「被害者・金子の家宅捜査について報告する」

そこで勿体つけて間をとる。

──イライラ…

「先輩、ペンでとんとんするのやめてください」

周りの目が痛いです。
訴える高橋も耳に入らない。

「金子の家では複数のパケが見つかり、さらにメモ書きによって黒蜜会の麻薬密売のバイヤーとして暗躍していた可能性が出てきた」

「なっ?」

これには朋恵も、それどころかほとんどの人間が度肝を抜かれてざわめいた。

「静かにしろ!」

上の方々がなだめるもこれは効果がない。
しかし、狸翠の次の言葉で一気に静まった。


「それだけじゃない」


何が、

その全員の視線を楽しむように一度見渡してから、狸翠は口を開いた。


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