泡沫眼角-ウタカタメカド-
屋代神社
* * *
「やあ、いらっしゃい」
「こんにちは、叔父さん」
言乃は丁寧にお辞儀した。
ここは屋代神社。
その名の通り、言乃の家系が神主を務めている。
現在は、言乃の叔父にあたる――関係は父の兄――屋代雅(ヤシロ マサシ)である。
彼もまた霊などを視ることができ、不思議な力を持つ一人。
しかし、言乃のように言葉のハンデはない。
と、いうよりも言乃のタイプの方が珍しいくらいである。
幼い頃、普通に人と言葉を交わせずに悩んだ言乃を導いてくれた人物でもある。
「また何か悩み事かい?」
「またって…ここに来るといつもそう見たいな言い方しないでください」
言乃がつい、と返すと雅は柔らかく笑った。
「少し前までほとんどがそうだった子のセリフじゃないね」
「……すみません。でも、少なくとも五年は前です」
「おや、そうだった? 年を取るとよくないね」
「まだ五十代じゃないですか…」
ハハハと笑うと、小皺くっきりとした。