泡沫眼角-ウタカタメカド-
力の使い方を教えてもらう時にタコが出来るほど聞いた話。
そして言乃は、それを真摯に受け止めている。
「近づき過ぎれば消される存在であっても霊が私たちの周りに集まってくるのは、それが喉から手が出るほど欲しい獲物だからだ」
その欲望にまみれれば、彼らは悪霊と化す。
「その誘惑を断ち切って離れるというのは、大変な決意がいるらしい。
そして多くは、決意を達成すると未練はなくなり、穏やかに、もしくは大いに疲弊して昇っていくそうだ」
言乃には、少しずつ話が見え始めてきた。
「つまり、離れてもまだこちらに残っているということは……」
「まだ、目標が達成されていない。そう考えるべきだろうね」
お腹の底から、ずっと体が冷えていくのを感じた。
――だとしたら…
――だとしたら、事件はまだ終わっていない!!
「早く知らせないと…!!」
「言乃?」
言乃はガタッと席を立った。
「叔父さん、ありがとうございました! 少し…急用が出来てしまったので、失礼します!」
それだけ言うと慌ただしく出ていってしまった。
驚いただろうに、雅には優しい笑み。
「あの言乃が、よく外に出るようになってくれたものだ」
自覚のない障害に悩み、他人と関わることを止めていた時と比べると、目覚ましい進歩だ。
人と在ることは痛みも多かろう。
すでに以前関わった事件で、辛い思いをしている。
それでも願わずにはいられない。
――彼女に、幸多からんことを――