泡沫眼角-ウタカタメカド-
「こういう時に役立つ日奈山はどうしたの?」
「それが、変わらず連絡つかないんです」
恵はスタスタ歩く朋恵に、人を避けつつやっとのことで追い付く。
この話をしようと朋恵たちが呼び出した時に返事が返ってこないまま、以降何の音沙汰もない。
携帯にメールしても、電話しても同じこと。
もう子供ではないし、プライベートがあるとはいえ、心配になる。
俯いてしまった恵を見て、朋恵は小さくため息をついた。
「全く、肝心な時にいないなんて。見つけたら言ってちょうだい? 一発お見舞いするから」
――何でって、やっぱりヒールだよね。朋恵さんだし。
本人自身は腕を示しているのだが。
駅前のスクエアビルの前で、二人は足を止めた。
「この辺りが候補者が演説する場所よ」
「はい」
「ここを見える位置で、なおかつ目立たない位置がいいかな」
辺りを見渡して、少しずつ移動して、二人は位置を決めた。
あとは、演説を待つばかり――。