泡沫眼角-ウタカタメカド-
階段に向かいかけたところで、一度振り向き吉野は、
「じゃあな。今会えて良かったよ、随分昔に戻ったみたいでな」
「!」
――…吉野…
「おう」
「またな」
そう、吉野は一人階段を降りて行った。
背中を見送っていると、いつの間にか近くに大柄な男が立っている。
「よろしいのですか?」
その顔には僅かな哀れみの同情。
「私から言えば或いは――」
「いい。今の、聞いてたんだろ? また今度だ」
うつむいた顔は見せないままに。
「行くぞ」
「はい。
――ファントム殿」