つよがり姫に振り回されて
「そうだったんですか」

まだ疑いの目で見てはいるが、理解はしてくれたみたいだ。

「そこで、美術部の皆様に小道具の作製をお手伝いいただけないかと…」

「…あたしたち美術部がやる意味はあるのですか?」

「えっ…そっそれは…」

意味はない。
これはあくまで『お手伝い』だ。
相手が嫌なら無理強いするわけにはいかない。

「ないです」

「…あなた、今なんて?」

「ないです。やる意味なんてありませんよ。私たちはあくまでお手伝いしていただきたいだけなので。やったところで、美術部にはなんのメリットもありません」

言い切った。
梨沙の潔さには感心させられてしまうことがある。
凛々しすぎる。

「…そっそう。なら別にやらなくてもいいのよね?」

若干押され気味になってはいるが、相手も引かない。

「えぇ、構いません。…あっメリット、一つだけあるかもしれないです」

「言ってみなさいよ」

挑発するように言う。

「かしこまりました。えぇっとメリットはですね…彼です」

そう言って梨沙は俺を指差した。
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