つよがり姫に振り回されて
「…ふぅ。いっぱい笑ったぁ」

笑顔を向けながらいう梨沙。
ふと我に返った。

「そっそうだな」

急に意識し始めて、返事がぎこちなくなる。

「どうした?急に」

俺の変化に察知したようだ。

「べっ別に。…もう傷の手当も終わったんだし、夏祭り行ってこいよ。楽しむのもお前の仕事だからな」

さっきの事を思い出してしまったから、これ以上梨沙といる訳にいかない。
さっき、理性が飛びそうだったこと。
期待してしまいそうな台詞も。

「…私は十分遊んだぞ。お化け屋敷入ったし、屋台の食べ物食べたし。もう大満足だ。それに、楽しめてないのは貴様だろう?」

「俺は別に…怪我してるし」

「あ…そっか。それじゃあ仕方ない。ここでおとなしく終わるのを待つか」

梨沙はそう言うと、近くの椅子に座り直した。
俺の作戦は失敗に終わった。
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