悪魔のようなアナタ【完】
呆れたように玲士は言う。
そんな玲士の声を頭の上に聞きながら灯里はパソコンに向き直った。
原因がわかればあとは直すだけだ。
とっとと修正して、玲士に叩きつけてとっとと上がろう。
無言でカタカタとキーボードを打ち出した灯里を玲士の瞳が見下ろす。
灯里の後ろでひっ詰めた髪や事務服の上に着込んだパーカーを見つつ、玲士は呟く。
「色気ゼロ。……おれも相当物好きなのかもな」
「……は? 何か言った?」
「何でもない。さっさと終わらせろ、ミジンコ」
「……っ!」
灯里はイラつく心を必死で抑え込んでパソコンの画面に集中した。
玲士とは同期入社だが、会ったのは会社が初めてではない。
――――中学の時。
所属していた吹奏楽部の他校との合同練習で灯里は玲士に初めて出会った。
フルートを手にした灯里の隣にたまたまクラリネットの玲士が座ったのだ。
あの時も初対面にも関わらず、灯里は玲士に手酷いダメ出しをされた。
それで強烈な印象が残り、入社式の日に玲士を見た瞬間、灯里は思い出したのだ。