悪魔のようなアナタ【完】
<side.玲士>
18:30。
打ち合わせ室から戻った玲士は隣の席に灯里の姿がないことに気が付いた。
どうやら先に帰ったらしい。
「薄情なヤツ……」
玲士は舌打ちし、窓へと寄った。
橙色の夕日が玲士の真っ直ぐな黒髪を赤く照らす。
ふと見ると。
見覚えのある女が会社の門を急ぎ足でくぐっていく。
玲士は目を見開いた。
「灯里?」
灯里は帰り道の駅の方ではなく逆の繁華街の方へと歩いていく。
玲士は眉根を寄せ、呟いた。
「……どこへ行く気だ?」
やがて、灯里の少し後ろから長身の男が同じように門の方へと歩いていく。
夕日の中でもあの体格は見間違いようがない。
――――神園晃人だ。