悪魔のようなアナタ【完】
19:00。
灯里は繁華街にある店の前に立っていた。
晃人が指定したのは和洋折衷の創作料理の店で、白い布でできた大きなシェードが店の前にぶら下がっている。
入り口の両脇には竹筒が掛けられ、桔梗や折鶴蘭など季節の花が綺麗に生けられている。
灯里は内心でうーんと眉根を寄せた。
見るからに敷居の高そうな店なので財布の中身がちょっと心配ではある。
といっても晃人は昔から灯里に財布を出させたことはない。
払うと言ってもいつのまにか会計を済まされてしまう。
「晃くん……」
昔も晃人を大人っぽいなと思ってはいたが、大人になった今は昔に増して大人っぽいなと思う。
それは会社でのスーツ姿を見慣れたせいだろうか、それとも取締役となり貫禄が付いたからだろうか?
自分を見守る優しい眼差しは変わらないが、やはり大人っぽくなったなとしみじみ思う。
それにしても、晃人には婚約者がいるらしいが二人でこうして食事などして大丈夫なのだろうか?
幼馴染なのであまり気にしていなかったが、いいのだろうかという気もしなくもない。
と、灯里が考え込んでいた時。