悪魔のようなアナタ【完】
「待たせたな、灯里」
聞き慣れたバリトンの声がし、灯里は顔を上げた。
見るとスーツ姿の晃人が前に立っている。
「中に入ろう」
晃人は灯里の背を抱き、中へと誘導する。
そのスマートなエスコートに灯里の胸がドキンと高鳴る。
微かに香るブラックティーの香りが灯里の胸を更に高鳴らせる。
「いらっしゃいませ。ご予約の神園様ですね」
「ああ」
「こちらでございます。どうぞ」
エントランスを抜けると細い通路となっており、所々に花やガラス、陶器などがセンスよく飾られている。
通路の両脇には所々に木の扉があり、それぞれ個室になっているらしい。
灯里は晃人に肩を抱かれたまま一番奥の個室に入った。
個室の中は壁に沿って黒檀のL字型のテーブルが置かれ、掘り炬燵となっている。
二人が席に着いたところで店員がお絞りとコースターを手早く置いた。
「お飲み物は何になさいますか?」
店員の言葉に、晃人は斜め向かいに座った灯里を見た。