悪魔のようなアナタ【完】
「灯里、お前酒は飲めるのか?」
「あ、うん。甘いカクテルとかなら。あんまり種類はわからないけど」
「そうだな。……では、まずはキールとホワイトレディで」
「畏まりました」
店員は一礼し、静かに部屋を辞した。
個室は5人も入れば一杯になってしまうほどの広さで、L字型のテーブルのため向かいではなく斜めに座ることになり、足を延ばせば当たってしまう感じだ。
――――L字のせいか、普通の対面席より距離が近い。
灯里はすぐ傍にある晃人の端整な横顔を眺めつつ、口を開いた。
「お洒落なお店だね~。あたし、こういう店って来たことないかも」
「そうか?」
「晃くんは彼女さんとよく行くの?」
灯里の言葉に、晃人の瞳に一瞬影が落ちる。
ん?と思った灯里だったがすぐにその影は消え、いつもの穏やかな笑みに戻る。
「そうだな。飲みに行ったり、季節によってはドライブに行くことも多いな。あとはショッピングか?」
「へー。彼女さんって何歳?」
「今年で30になる。俺の2歳下だ」
晃人はくすりと笑い灯里を見た。
昔から見慣れた笑顔だが、近い距離にいるせいか少しだけドキドキする。