悪魔のようなアナタ【完】



「お待たせしました」


お盆を手にした店員がノックと共に部屋へと入ってきた。

ホワイトレディを灯里の前に、キールを晃人の前に置く。


「お食事はいかがなさいますか?」

「そうだな、では……」


晃人はメニューを見ながら何品か頼んだ。

晃人は昔から灯里の好き嫌いを熟知しているため迷うことはない。

――――やはり、スマートだ。


やがて、店員が去った後。

晃人はグラスを手にして灯里を見た。

真っ直ぐ瞳に差し込むような眼差しにドキンとした灯里に、晃人は低く艶のある声で告げる。


「では乾杯しようか。……俺達の再会に」

「うん、乾杯!」


灯里はカツンと晃人のグラスに軽くグラスを当てた。

そのままグラスを傾け、一口飲む。

灯里の口の中にホワイトレディの甘く爽やかな香りが広がる。

ホワイトレディはドライ・ジンとホワイト・キュラソー、レモンジュースを合わせた女性向けのさっぱりしたカクテルだ。



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