悪魔のようなアナタ【完】
<side.晃人>
3時間後。
店を出たところで晃人はタクシーを呼び、灯里を後部座席に乗せた。
カクテルを数杯飲んだせいだろうか、灯里は少し眠そうな顔をしている。
晃人は運転手に灯里の家の場所を伝え、手早く紙幣を渡した。
『畏まりました』という運転手の声と共にドアが閉まり、タクシーがゆっくりと動き出す。
――――タクシーを見送った後。
晃人は近くの公園のベンチに座り、夜空を見上げた。
灯里が自分を見つめた時のあの眼差しが脳裏から離れない。
自分への信頼に満ちた、昔から変わらぬ純朴な輝く瞳……。
あの瞳を見た瞬間、晃人はどうしようもなく灯里に惹かれるのを感じた。
――――自分は灯里を好きになっている。
昔のような淡く優しい気持ちではなく、鮮やかなはっきりとした感情だ。
灯里を誰にも渡したくない……。
「……灯里……」