悪魔のようなアナタ【完】
五章
1.悪魔とメール
7月下旬。
灯里は東京に向かう新幹線の中にいた。
自由席の真中、三列シートの通路席に灯里が、その隣に山岡課長、経理の香川さんと並んで座っている。
女性二人に挟まれた山岡課長はどことなく緊張した表情で口を開いた。
「それにしても、間に合って良かったね~。あの時はどうしようかと思ったよ」
「そうですねー」
あははと灯里は苦笑した。
その表情は少しぎこちない。
――――結局あの後。
翌日に玲士が作ったデータを印刷所に入稿し、事なきを得た。
灯里が作ったデータはバックアップからも見つからず、どこに消えたのか定かではない。
「まぁでも、灯里ちゃんのミスじゃないって分かって良かったよ。消えた原因は不明だって佐藤部長は言ってたけどね~」
「ホントに、どうして消えたんでしょうかね……」
「ま、今日は展示会だ。データのことは忘れて頑張ろう。今日は忙しいぞ~」