悪魔のようなアナタ【完】
「うぅ……っ」
昨日の玲士の視線を思い出すと朝だというのに背筋がゾッと冷えていく。
灯里は呻き声を上げながら手早くメールを打った。
必要事項だけ入力して『送信』ボタンを押す。
ちらりと腕時計を見ると、既に新幹線に乗って30分以上が経過している。
しかしまだ7時だ、玲士もまだ寝ているかもしれない。
女子社員に聞いた話だが、玲士は会社のすぐ近くで一人暮らししているらしい。
実家も同じ市街だがあまり帰ることはないと言っていた。
灯里はへぇとあまり興味なくその話を聞いていたが、そんな話が出回るということはやはり玲士は社内の女性陣に相当人気らしい。
灯里にはさっぱり理解できないが……。
灯里はぱたんと携帯を閉じた。
しかしその瞬間、携帯がブルッと鳴った。
慌てて開いた灯里の目に映ったのは……。
『遅い。10分以内と言ったはずだ』
灯里はぴしりと硬直した。
メールにすら冷気を漂わせるとは……。
やはり悪魔。あなどれない。