悪魔のようなアナタ【完】
しかし会社は9時からなのに、この時間に起きているとは……。
毎朝8時に起きている灯里とは雲泥の差だ。
一体こんな早くに起きて何をやっているのか。
奴のことだ、地獄の魔王に朝の祈りでも捧げているのだろうか?
知りたいような知りたくないような……。
目を白黒させる灯里を、山岡課長越しに香川さんが覗き込む。
「あら? カレシからメールかしら?」
「いえ、悪魔です」
速攻で訂正し、灯里は窓際に座る香川さんの方に顔を向けた。
香川さんは経理課員だが昔商事部に在籍していたことがあり、商品説明に長けているので毎年展示会に参加している。
艶やかな長い髪を後ろでまとめた、いかにも『お姉さん』という感じの綺麗な女性だ。
まだ結婚していないがお局様という感じはしない。
「この頃、吉倉さんと水澤くん、よく一緒にいるわよね?」
「業務命令で仕方なくです」