悪魔のようなアナタ【完】
2.展示会
9:30。
展示会場に入った灯里は控室に入り、家から持ってきたスーツに着替えた。
普段、会社では事務服なのでたまにスーツを着ると肩が凝るような気がする。
スーツはリクルートの時に購入した紺色の物で、今は年に一度切るか着ないかという頻度だ。
更衣室から出た灯里の前に山岡課長が歩み寄ってくる。
その手には大きめの紙袋がある。
「さて、じゃあうちのブースに行ってみるとしようか」
灯里は山岡課長に続いて展示フロアに入り、忍村商事のブースへと向かった。
ブースは20m四方ぐらいの広さで、灯里が説明を担当する『企業向けエアコン』は端の方にある。
『企業向けエアコン』は天井取付タイプが主流で、灯里が説明するのもこのタイプだ。
展示自体は2日ほど前から総務部が主体で行ってくれている。
二人はブース内の疑似天井に取り付けられたエアコンを見上げた。
「わりと高い位置にあるね~。フィルターを外すには脚立がいるかもしれないね」
「そうですね」