悪魔のようなアナタ【完】
13:00。
展示会場はスーツを着たサラリーマンでごった返している。
山岡課長の話によると今年は例年にない人出らしい。
灯里もパンフを片手に展示スペースでサラリーマン相手に説明を行っていた。
普段は椅子に座って仕事をしているので、立ちっぱなしというのは案外疲れる。
と、受付カウンターが少しざわめいたのに気付き灯里は振り返った。
見ると、スーツ姿の晃人が受付奥の商談スペースへと入っていくのが見える。
「晃くん……」
晃人は今回、商談担当ということで展示会に参加すると誰かが言っていた。
アメリカ仕込みの交渉術を持つ晃人にしてみれば、こういった展示会での商談など朝飯前だろう。
ちなみに玲士も商談担当として展示会に参加する。
あの横暴っぷりでどう商談しているのかまるで想像がつかないが、玲士は去年、商談成立数ではトップだった。
何か変なものでも飲ませてるんじゃなかろうかと灯里は思ったりもしたが……。
「あ、吉倉さん、こっち!」
香川さんに呼ばれ、灯里ははっと顔を上げた。
香川さんは複合機の説明をしており、その合間を縫って商談スペースの客にお茶を出している。