悪魔のようなアナタ【完】
3.悪意
14:00。
灯里は展示ブースの一角に設えられた壇上で、電機設備課が取り扱っている企業用エアコンの説明をしていた。
集まったサラリーマンは20人ほどだろうか。
各社が同じように説明をしているこの時間にしては上々な人数だ。
「こちらの商品は四方向に送風するタイプで……」
灯里は頭の中に入っている情報を一つずつ引き出しながら説明した。
パンフを作ったおかげで情報が頭の中に入っているため、去年に比べてすらすらと言葉が出てくる。
「シングルとダブルがございます。なお、馬力は1.5馬力から10馬力まで……」
灯里は説明しながら脇に置いておいた脚立を引き寄せた。
説明しながら脚立を手早く広げ、天井に取り付けたエアコンのフィルターを外すべく乗り上がる。
「ちなみに、このフィルターの中ですが……」
と脚立の3段目に乗った時。
突然視界がグラッと揺れ、灯里は息を飲んだ。
バターンという大きな音とともに脚立が倒れ、灯里もその場に崩れ落ちた。
何が起こったのかわからない。
慌てて立ち上がろうとした灯里だったが、その瞬間、右足に激痛が走った。
「……っ!!」