悪魔のようなアナタ【完】



晃人は手早く上着を脱ぎ、灯里の足の上にばさっと掛けた。

そのまま背と膝の後ろに腕を差し込み、ぐっと力を入れて灯里を抱き上げる。

いわゆるお姫様抱っこのの形になり、灯里は羞恥のあまりカッと頬を染めた。


「……っ!」


恥ずかしいものの、足が痛い今はそれどころではない。

灯里は痛みに顔を顰めた。

晃人は灯里を抱いたまま近くにいた香川さんに声を掛ける。


「香川さん」

「はいっ!」

「続けて説明を頼む。俺は灯里を救護室に連れて行く」


晃人は傍にいた香川さんに指示し、素早く壇上から駆け下りた。

そのまま人波の間を通り抜け、救護室へと向かう。


忍村商事のブースがしだいに遠ざかっていく。

灯里は晃人の腕をぐっと掴み、足を襲う痛みに唇を噛みしめた……。


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