悪魔のようなアナタ【完】



おばさんの指が何度か確かめるように患部に触れる。

患部に走る痛みに灯里はぐっと眉を寄せた。


「折れちゃいないね。捻挫だね」

「……そう、ですか……」

「応急処置で冷やしておくから、後で病院に行くようにね」


おばさんは手早く保冷剤を患部に当て、包帯で巻いて縛っていく。

冷やしたことで一瞬痛みは弱まったが、やがて再びじんじんした痛みが広がっていく。

顔をしかめる灯里を晃人は心配そうに覗き込んだ。


「お前の荷物は?」

「え?」

「今日はもう無理だろう。病院に行け。タクシーを呼ぶから」

「で、でも……」

「いいから言うことを聞くんだ。病院に行ったらホテルに行け。外出するんじゃないぞ」


晃人は問答無用と言った口調で言い、灯里に背を向けた。

そのまま控室の方へと足早に歩いていく。


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