悪魔のようなアナタ【完】
<side.美奈>
通路の向うを、晃人が大股でスタスタと歩いていく。
その腕に抱えられているのは、……灯里だ。
美奈は震える手をぐっと握りしめた。
その顔は緊張のあまり青ざめ、頬は引き攣っている。
まさか、本当に狙った通りになるとは思ってもみなかった。
ちょっとバランスを崩すだけかと思ったのに……。
痛みに顔を歪ませた灯里の顔を思い出すと、多少良心の呵責も感じる。
けれど灯里の感じた痛みより自分の心が感じている痛みの方が、ずっと深く……重い。
自分のこの心の痛みを彼女も味わうべきなのだ。
心の痛みが無理ならば、せめて肉体的な痛みだけでも……。
美奈の口元に酷薄な笑みが刻まれる。
――――歪んでいると自分でも思う。
しかし一度手を染めてしまったら……もう止められない。
あのデータを消去したときから、逃れられない闇の中に足を踏み入れてしまったのだ。