悪魔のようなアナタ【完】
「そこ。ついてるよ?」
「ん?」
パスタを食べていた灯里の口元に、ふいに玲士が指を伸ばした。
驚き顔を上げた灯里の頬に玲士の指が触れ、頬についていたトマトソースを掬い取る。
「……っ」
思わずドキリとした灯里に、玲士が紙ナプキンで指を拭きつつ言う。
「後で鏡見てきたら。けっこう目立つから」
「……わ、わかった」
灯里は慌てて頷き、再びフォークを動かした。
―――― 一瞬ドキリとしてしまった。
相手はこいつなのに……。
やがて灯里はランチを食べ終え、フォークを置いた。
見ると玲士も既に食事を終えている。
「ちょっとお手洗いに行ってくる」
「ああ」
灯里は席を立ってお手洗いへと向かった。
少し背伸びをしてぐっと鏡に寄って見てみると、確かに頬がうっすらと赤くなっている。