悪魔のようなアナタ【完】
六章
1.社員旅行
8月上旬。
展示会も無事に終わり、ひと息つくこの時期。
灯里は机の隅の卓上カレンダーを引き寄せ、蛍光マーカーを手に取った。
「課長は夏休み、いつ取りますかー?」
「そうだねぇ、12日から16日ぐらいかな。女房の実家に行かなきゃならないんでね」
灯里は山岡課長に言われた日付をマーカーで塗りつぶした。
灯里の会社では夏休みはお盆期間中に5日間、希望の日にとることになっている。
基本的には早い者勝ちだが、灯里は実家通いのため毎年一番最後に休みを入れている。
「灯里ちゃんはいつ休み取るんだい?」
「あたしは帰省とかないですから、みなさんの都合に合わせますよ~」
「毎年悪いね、灯里ちゃん」
「いえいえ~。ゆっくりしてらして下さいね」
夏休みを目前にしたこの時期、社内にはどこかそわそわした空気が満ちる。
灯里もそれは例外ではない。
そして8月の末には社員旅行がある。
社員が200人ほどいるので、毎年5回に分けて実行している。