悪魔のようなアナタ【完】
灯里はハンカチを軽く濡らし、ぽんぽんと汚れた部分を軽く叩いた。
トマトソースが取れたのを確認してお手洗いを出る。
と、その時。
「あら~? 水澤君じゃない?」
入り口の方から女性の声がした。
見ると、事務服を着た30代の女性が玲士を驚いたように見つめている。
香川祥子。30歳。
同じ会社の経理部に勤める女性だ。
祥子の後ろには茶髪でくりっとした目の若い女性の姿も見える。
河瀬美奈。24歳。
灯里より一年遅れて入社した女性社員で、総務課に勤めている。
二人に視線を向けた灯里だったが、二人がレジの方を見ていることに気が付き灯里もレジの方に視線を投げた。
見ると。
なぜか玲士がレジの前に立っている。
「あらあら? 吉倉さんと一緒なの? 珍しいわね~」
「サルに餌付けしてるだけですよ」