悪魔のようなアナタ【完】
2.夏の思い出
午後。
一向は山寺に到着した。
鬱蒼とした緑の木々の中、風の音と蝉の声だけが辺りに響く。
灯里は一歩、また一歩と石段を登って行った。
が。
「うー……」
山寺ということで階段が多いだろうと想像はしていたが、まさかここまでとは想像していなかった。
昇っても昇ってもゴールが見えてこない。
途中まで登ったところで灯里は足を止めた。
怪我をしていたせいか体力が落ちているらしい。
山岡課長も最初は灯里に合わせてくれていたが、さすがに申し訳なくなり灯里は自分のペースでゆっくりと登ることにした。
既に他の社員の姿は見えない。
灯里ははぁぁと深呼吸し、再び歩き出した。
ゆっくり昇っていると、木の幹や苔、落ち葉など細かい部分をよく見ることができる。