悪魔のようなアナタ【完】
「どうした? 他の皆は?」
「先に行きました。私、ちょっと体力が落ちてるので……」
灯里は少し笑い、俯いた。
懐かしく思えても、今はもう敬語で話す間柄だ。
昔とは違う……。
懐かしさと共に寂しさが胸に押し寄せる。
灯里は軽く唇を噛みしめた。
そのとき。
晃人の手がそっと灯里の両頬を包んだ。
驚き顔を上げた灯里の鼻先をブラックティーの香りがかすめる。
昔のお日様の香りとは違う――――大人の香り。
灯里の胸がトクンと高鳴る。
吸い込まれるように見上げる灯里を、晃人の目が心配そうに見下ろす。