悪魔のようなアナタ【完】
「大丈夫か? 上まで行けるか?」
「……行けるとこまで行ってみるつもり、です」
「途中まで負ぶって行こうか?」
晃人の言葉に灯里は慌てて首を振った。
昔はともかく、さすがに今負ぶってもらうのは申し訳ない。
「だ、大丈夫です。ゆっくり行きますから……」
「じゃあ手を引いてやる」
「……っ!」
晃人はすっと灯里の頬から手を離し、灯里の手を取った。
そのままぐっと手を握りしめ、灯里の手を引いてゆっくりと階段を登り出す。
灯里は胸をバクバクさせながら晃人の後に続いた。
こんなところを他の社員に見られたらとんでもないことになる。
けれどこういう時の晃人は昔から強引で、灯里が止めても聞かない。
止めたら問答無用で負ぶわれるハメになるだろう。