悪魔のようなアナタ【完】
玲士はくすりと笑い、レジの店員に紙幣を渡す。
店員はにっこり笑って受け取り、『ありがとうございました~』の声とともに玲士にお釣りを渡す。
灯里は思わずぽかんと玲士を見てしまった。
……なぜ玲士が支払っているのか?
首を傾げた灯里を玲士は入り口のドアを開けながら手招きした。
慌てて続いた灯里は、店を出たところで玲士を見上げた。
「水澤くん、なんで……」
「お前、遅いから。ランチタイムにいつまでも居座ったら迷惑だろ?」
「そ、そうだけど……」
「これは貸しだ。いずれ倍にして返してもらうよ?」
くすりと玲士は微笑む。
――――氷の微笑。
氷のように冷たいのに、なぜか目が離せない。
魔性すら感じる微笑みを、灯里は思わず呆然と食い入るように見つめていた……。