悪魔のようなアナタ【完】
灯里ははっと息を飲んだ。
朝子というのは晃人の婚約者だろうか?
「……っ」
灯里の胸に冷たいものが広がっていく。
今日、晃人は山寺で昔のように手を繋いで登ってくれた。
けれど晃人にはもう決めた人がいるのだ。
そしてその人と未来を歩いていく……。
「晃くん……」
鮮やかだった思い出が急に色褪せていく。
――――あれはもう、過去のことなのだ。
晃人がこれから手を取って守っていくのは自分ではなく婚約者の女性なのだ。
そうわかっていても、辛い……。
晃人の声がロビーに響く。
灯里は逃げるように外へと出た……。