悪魔のようなアナタ【完】
「吉倉せんぱいっ」
――――15:00。
休憩室の椅子に座り缶コーヒーを片手にため息をつく灯里に、横から美奈の声がかかる。
長い茶髪をカラフルなピンでとめ、くりっとした目には完璧なアイメイクを施した美奈はいわゆる今時の可愛い子だ。
性格は一言でいうと『子猫』。
自分の愛らしさを分かったうえでアピールする感じだ。
灯里としては別に苦手ではないが特に親しいわけでもない。
首を傾げた灯里の顔を美奈は横から覗き込み、話しかける。
「先輩、今日のお昼、水澤先輩と一緒にいましたよね?」
「あー……あれね。拉致られたというか……」
「水澤先輩と仲いいんですか?」
美奈はどうやら玲士のことが気になるらしい。
灯里ははぁとため息をつき、慌てて首を振った。
「いやいやいやいやいや。そんなことない。というかイヤ」
「どんだけイヤなんですか先輩……」
「美奈ちゃんもわかってると思うけど。あいつは氷の王子、というか氷の魔物よ。いまにあのブリザードで地球を氷河期に戻すに違いないわ……」