悪魔のようなアナタ【完】
見ると、ロビーの奥から晃人がこちらに向かって歩いてくる。
どうやら電話は終わったらしい。
灯里は歩いてくる晃人をぼーっと見つめていた。
「灯里、何してるんだ、こんなところで?」
「……」
「酒にでも酔ったのか? ……ってお前、何で足が濡れてるんだ?」
晃人は灯里の足元を見、驚いたように目を見開いた。
そんな灯里に、晃人は怪訝そうに首を傾げる。
「灯里? ……お前、どうかしたのか?」
「……え?」
「その足では部屋に戻れないだろう。そこに座れ」
晃人は灯里の腕を取り、近くのソファーに座らせた。
スラックスのポケットからハンカチを取り出し、灯里の前に跪く。
晃人は灯里のサンダルを脱がし、濡れていた足を片方ずつハンカチで拭いた。
「……っ」
ふいに足に触れた晃人の手の感触に、灯里はびくっと背筋を強張らせた。
晃人の手のぬくもりが灯里の胸にゆっくりと染みていく。
晃人は灯里の足を拭き終わった後、サンダルを履かせて灯里の両肩を掴んだ。