悪魔のようなアナタ【完】
晃人は美奈の出現に一瞬驚いたように眉を上げたが、すぐにその目に剣呑な光を浮かべた。
その鋭い眼差しは灯里に向けるものとは全く違う。
気圧されそうになりながらも美奈は口元に笑みを刷き、晃人の前に立った。
「こんばんは。私、総務部の河瀬といいます」
「……」
「すみません。……今のお二人の姿、見ちゃいました」
「……」
「仲が良いんですね、吉倉先輩と」
「だから何だ?」
晃人は冷たい声でさくりと言う。
灯里に向けるものより数段低い声と刃物のような鋭い目線に、美奈は内心息を飲みながら口を開いた。
「いえ、ちょっと気になっただけです。吉倉先輩とはどういう関係なんですか?」
「君には関係ないだろう」
晃人は感情のない声で短く言う。
にべもない冷たさだがここで引くわけにいかない。
美奈は無理やり愛想笑いを浮かべて言った。