悪魔のようなアナタ【完】
「取締役は吉倉先輩を手に入れるために。私は、水澤先輩を手に入れるために」
「……」
「お互いの利益のために。そうすれば、きっと……」
「――――断る」
ずっと黙っていた晃人が突然口を開いた。
低い、氷のような声が辺りに響く。
美奈ははっと顔を上げた。
その目に映ったのは昏く鋭い、刃のような瞳。
美奈は思わず息を飲んだ。
こんな瞳はこれまで見たことがない。
固まる美奈に、晃人は唇の端を歪めて嗤う。
「俺は自分の力だけで灯里を手に入れる。誰の力も借りない」
「……っ」
「それは灯里に対しての礼儀でもある。君は違うようだがな」
言い、晃人はうっすらと笑った。
侮蔑に満ちた冷笑に美奈の心がすっと冷えていく。
――――失敗した。